「求職者支援制度」とは、雇用保険を受給できない求職者が、職業訓練によってスキルアップを図るため、訓練期間中の金銭的な援助も含め、求職者が早期就職を果たすために国がハローワークを通じてバックアップする制度です。
この求職者支援制度が作られるには、紆余曲折があったようですが、少し、成立までの経緯を見てみたいと思います。
緊急雇用対策
2008年秋、アメリカのサブプライム問題に端を発した世界的な金融危機、いわゆるリーマンショックの影響で、日本においては、自動車などの製造業の非正規労働者の解雇が続出した「派遣切り」という言葉は耳にそれほど古くないかと思います。
雇用保険の受給資格を得られない不安定な非正規労働者が解雇されて途方に暮れるというニュースが流れていたことを覚えている方も多いかと思います。
そうした中、セーフティネットの充実を求める声が高まり、政府もようやく対策を講じることになりました。
そして、2008年の年末に、緊急雇用対策を発表し、その中で、雇用保険を受給できない人に対して、
- 6ヶ月間家賃と生活費を貸し付ける生活安定資金融資の創設
- 職業訓練期間中に、所得200万円以下の人に対する月10万円(扶養家族がいる場合には月12万円)の貸付制度の導入
という政策が打ち出され、いずれも6ヶ月以内に就職が決まったら、返済を一部免除するという給付に近いものでした。
しかし、派遣切りの影響は大きく、応急措置に過ぎませんでした。
緊急人材育成支援事業
日増しに厳しさを増す雇用不安に対し、さらなる対策の必要性が叫ばれるようになり、2009年7月には、「緊急人材育成支援事業」がスタートしました。
この制度は、前年に打ち出された緊急雇用対策をさらに制度化したもので、景気が回復するまでの暫定措置として3年間にわたり実施される予定でした。
事業の内容は大きく分けて、
- 雇用保険を受給できない人向けの職業訓練である「基金訓練」
- 訓練期間中の生活保障のための「訓練・生活支援給付金」
- 生活費を貸し付ける「訓練・生活支援資金融資」
の3本柱から成り立っていました。
前年の緊急雇用対策との大きな違いは、訓練期間中の10万円の貸付金を返済義務のない完全な給付金に変えた点です。
さらに、それまでの公共職業訓練以外にも、民間の専門学校を活用し、大量の認定コースも用意されました。
求職者支援制度
こうして軌道に乗り始めたかにみえた緊急人材育成支援事業ですが、2009年夏の総選挙で自民党から民主党へと政権が変わったことにより、セーフティネットの見直しが行われ、緊急人材育成支援事業は執行停止となり、基金訓練は2011(平成23)年の9月開講分をもって終了することとなりました。
それに代わり、3年間の暫定措置だった緊急人材育成支援事業を恒久化する法整備がすすめられました。
その結果、新たに制度化されたのが、2011(平成23)年10月1日からスタートした「求職者支援制度」です。
求職者支援制度では、それまでの緊急人材育成支援事業を大きく受け継いだもので、以下3本柱から成ります。
単に名称が変わっただけではなく、内容的にも緊急人材育成支援事業を見直すところは見直され、特に給付金の受給条件は厳しくなり、また、出席条件を厳しくするなど、できるだけ給付金目当てで受講するといったことが無いように改善されています。