求職者支援訓練の他に、以前からある公共職業訓練というのもありますが、どう違うのだろうかと疑問に思う人も多いかと思います。
そもそも職業訓練とは、労働者やこれから職を得ようとする人が、仕事に必要な知識や技能を身につけるためのものです。
企業や業界団体が自社グループ社員に対して実施している私設のものもあれば、国や都道府県が一般労働者に対して実施している公立のものもあります。
これらのうち、国や都道府県が運営しているものを「公共職業訓練」と呼ばれています。
公共職業訓練校は、日本全国すべての都道府県に設置されていて、離職者向け、在職者向け、学卒者向けの3つに大別され、離職者向けは無料ですが、それ以外は原則有料となっています。
コースは、機械、電気、金属加工、建築設備などの現場系の技能習得コースが多かったのですが、それでは産業構造の変化に対応できなかったため、1990年代後半からは、民間専門学校に委託して事務職、パソコンスキル、IT関係、医療・介護福祉関係などの新たなコースも多数新設されました。
公共職業訓練は、その財源をおもに雇用保険料でまかなっているため、雇用保険制度の枠内で運営されています。
このため、失業した人がこの公共職業訓練を利用する場合には、雇用保険の支給を受けながら訓練を受けるというのが一般的です。
だからといって、雇用保険の受給資格のない人は利用できないかと言えばそうではなく、受給資格のない人でも利用することはできました。
しかしその後、2008年のリーマンショックにより、雇用保険受給資格のない非正規労働者が大量に解雇されるという深刻な事態を受け、明日の生活もままならない失業者に対し公共職業訓練だけでは対応できず、新たに雇用保険を受給できない人に対する専用のコースとして主に民間に委託し新設されたのが、求職者支援訓練です(詳しい経緯についてはこちらを参照)。
こうした経緯から、求職者支援訓練では、雇用保険を受給できない人だけを対象としている点が大きな違いです。
このように、雇用保険制度の枠組みの中で、職を求める人がスキルアップを行うために用意されたのが公共職業訓練で、求職者支援制度の枠組みの中で用意されたのが求職者支援訓練と言えるかと思います。
ただし、求職者支援訓練コースに希望するコースが無ければ、制度の枠組みを超えて公共職業訓練コースの中から選択することも可能です(その反対も可能)。
その際には、給付や手当については、それぞれの制度の要件が適用されます。
また、雇用保険受給者であっても、雇用保険の支給が終了した場合は、求職者支援制度を利用できます。
~ 公共職業訓練 ~
- 適用制度 : 雇用保険制度
- 対象 : 雇用保険の受給資格のある人または受給資格のない人
- 実施施設 : 公共職業訓練校および民間専門学校など
- 期間 : 3~6ヶ月、1~2年
- 費用 : テキスト代等以外は無料(長期のものは有料のものもあり)
- 募集時期 : 6ヶ月コースは年2回、1年コースは年1回など
- 申し込み : 訓練開始日に失業が確定していれば在職中でも申し込み可
~ 求職者支援訓練 ~
- 適用制度 : 求職者支援制度
- 対象 : 雇用保険の受給資格の無い人
- 実施施設 : おもに民間専門学校など
- 期間 : おもに3~6ヶ月
- 費用 : テキスト代等以外は無料
- 募集時期 : ほぼ毎月
- 申し込み : 申し込み時点で特定求職者であること